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南極観測隊になれる!?体験型展示「大南極展」開催へ

この夏、日本科学未来館で特別展「大南極展」が開催される。
立川に拠点を置く国立極地研究所が関わる注目の企画だ。

南極観測隊として3回、南極に赴いた経験を持つ国立極地研究所の広報室長・熊谷宏靖さんに、展示の見どころや背景について話を聞いた。

2026/07/01 (水) 2026/09/27 (日)
開催場所

日本科学未来館 1階 企画展示ゾーン

2026.04.28

南極観測隊として南極で活動する熊谷さん

大南極展とは?
―まずは、今回の展示のコンセプトを教えてください
熊谷さん:本展のコンセプトは、「来場者自身が南極観測隊になる」というものです。

単に展示を見るだけでなく、観測隊の活動を自ら体験することで、南極という遠い存在を身近に感じてもらうことを狙っています。

 

最もわかりやすいものとしては、南極の氷に実際に触れられる体験だ。
実は南極の氷は水が凍ってできたものではなく、降り積もった雪が、長い年月をかけて圧縮されてできたもの。

その過程で当時の空気が内部に閉じ込められている。
そのため、氷に触れていると気泡が弾け、「パチパチ」と音がすることがあるという。

太古の空気が解き放たれる瞬間に立ち会える。不思議でロマンを感じる体験だ。
また大阪・関西万博で話題になった火星の石の触れる標本や、実際に持ち上げて重さを体感できる鉄隕石も展示される。

南極で採取された鉄隕石©国立極地研究所


展示に加え、ブリザード体験やペンギンの個体数を数える調査など、観測作業の一端を再現したプログラムも用意されている。

寒さの代表のようなイメージのあるブリザードは、気温ではなく風の強さや視界の悪さ等によって定義されるため、実際はむしろ暖かいこともあるそうだ。

こうした思い込みとのズレを知ることが出来るのも、現地のリアリティに触れる面白さのひとつとなる。

―本展のターゲット層がいれば教えてください
熊谷さん:開催期間が夏休み期間なので、子どもでも直感的に楽しめる内容でありながら、大人にとっても観測のリアリティを感じられるつくりになっています。

 

研究機関にとって、専門的な研究内容を社会にどう伝えるかは大きな課題の一つだ。

熊谷さん:研究はどうしても興味のある方にしか届きにくい部分があり、まずは興味を持っていただくきっかけを作ることが重要です。

今回の体験型展示が幅広い方にとっての入口となったら良いと考えています。

―なぜ今、開催することになったのでしょうか?
熊谷さん:今回の展示は、日本の南極観測が始まってから70周年を迎えることを記念した事業の一環として企画されました。

 

1956年に始まった南極観測は、地球環境の変動を把握するうえで重要な役割を果たしてきた。
その節目にあたり、これまでの歩みと現在の研究を広く伝える場として、本展は位置づけられている。
過去には50周年の際に大規模な展示が行われたが、60周年では実施されなかった。

そうした経緯もあり、「70周年ではぜひ実施したい」という関係者の思いが今回の開催につながっているという。


南極観測の二つの意義:社会貢献と知的好奇心
―そもそも南極観測をする意義はどこにあるのでしょうか?
熊谷さん:私は南極観測には二つの意義があると思っています。

社会的課題に対する貢献と知的好奇心を満たすことです。

 

南極観測は、地球温暖化や海面上昇といった社会的課題の理解にも直結する、重要な研究分野だ。
例えば、南極の氷は年間で130〜150ギガトンもの規模で減少しているとされる。

これは、日本の生活用水の約7〜8年分に相当する量だという。
もし南極の氷がすべて溶けた場合、海面は約58メートル上昇すると試算されている。
熊谷さんに「立川周辺でいえば、日野橋付近の多摩川が大体海抜60メートルですので、そのあたりまでが全て海になる。

そう考えると、その影響の大きさが実感できますよね」と言われ南極の氷のインパクトの大きさを実感した。

しかし、南極観測の意義はそれだけにとどまらないと熊谷さんは言う。
「誰も行ったことがない場所で、誰も知らないような現象を調べる。

純粋に知的好奇心を満たすような活動で、それ自体がただ楽しいということもまた大事なことだと思います」。
実際に南極に行った熊谷さんが、生き生きと語る姿が印象に残った。
社会的意義と純粋な知的好奇心という南極観測のもつ二つの意義、その両方が今回の展示には込められている。

国立極地研究所 広報室長 熊谷宏靖さん

―この展示を通して、来場者にどのような変化を期待しているかのメッセージをお願いします
熊谷さん:見に来た子供たちが、将来観測隊になりたいと思ってくれることが理想です。

観測隊になりたいとまでは思わなくとも、我々がなぜ南極まで行ってこんなことをしているのか、そこにどんな意味があるのかを感じていただいて、応援してもらえるようになってもらえると嬉しいですね。

南極は多くの人にとって遠い存在に思える。

しかし、その研究は地球全体、そして私たちの生活とも無関係ではない。
体験を通じて生まれる小さな関心が、やがて大きな理解へとつながっていく。
本展は、その第一歩を踏み出すきっかけになりそうだ。

■特別展「大南極展」
会期:2026年7月1日(水)~9月27日(日)
会場:日本科学未来館 1階 企画展示ゾーン
特別展「大南極展」 | 2026年7月1日~9月27日 日本科学未来館

(取材ライター:小林拓矢)

会場地図