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黒須 俊一郎 : Cross Shunichiro創作家/グラフィックデザイナー/ミュージシャン

小平駅からグリーンロード沿いを歩く。
小鳥のさえずりや、葉から落ちるしずくの音。
一言では伝えることのできない日常にあふれる多様な音の数々。

赴くままに感じる「音」から作品を作り出す、黒須俊一郎さんを訪ねた。

2025.11.12

黒須さんは、1991年からフリーランスのグラフィックデザイナーとして、玩具メーカー、OA企業、飲食店、住宅メーカー、出版など幅広くデザインの仕事をし、2015年頃から、自分自身の作品をつくりたいと強く思い、アート創作活動を始める。

「始まりは偶然⁈ 必然⁈」
「29才の時、たまたまというか、それなりの訳あり、当時働いていたデザイン事務所を辞めることに。

30才までには独立したいと思っていたので、「ちょうどいいや!」ぐらいの気持ちで独立宣言。

仕事のあては全くありませんでしたが、フリーになりたくて、もう強引に「Realize」を立ち上げました。

当然ですが1年位は全く仕事がなくて、友人・知人の仕事を手伝っていました。

あるとき一つのご縁から仕事をいただき、うまくフィットして今に至っています」。

「音が絵になった瞬間と原点」
「父は塗装屋で、趣味で油絵を描いていたこともあり(幼少のころ父は画家だと思い込んでいた)子供の頃から絵を描くのが好きでしたね。

大人になって、水の存在が妙に好きだということにあるとき気付いて。
それも日常の水道の蛇口から出る水の音が、なんだか心地良いな〜と。

ふと、この蛇口から出る『ただの水の音』も、聞く人の気分によって、さまざまに変化するのだろうなと。

気持ちいい、楽しい♪と感じたらその「音」はもう「音楽」なんだな!

そう思ったら、湯気が沸く音、コーヒーが落ちる音、落ち葉を踏み歩く音…

音が音楽に変化する瞬間というのは日常にたくさんころがっていて、でも大人になるにつれ忘れてしまいがち。

そんな『いつでも、どこにでもある音』を楽しく思い出していたら“anywhere Music!“ というコンセプトがおりてきて、一気にポップアート作品を描き上げました。これが今につながる、自分自身のアート創作活動の原点になりました」と話す。

『anywhere MUSiC!』どこにでもある「音」が『音楽』になる瞬間(とき)をテーマにした作品

「無想書記」

「これは『無想書記』という独自の創作アプローチで、僕が名付けました。

何かの文字に見えますが、文字ではありません。

筆をおろしたら、何も考えず体・心=無意識のおもむくままに意味を持たないカタチをひたすら書き連ねてゆくものです。

『せ ぬ ほ た り よ か め ね ご は…』例えばめちゃくちゃな言葉(音)を喋り続けようとしても、すぐに詰まってしまい、うまくしゃべれないものです。

言葉は意味があって、伝える相手がいるからこそ、自然に喋ることができるんですね。

あるとき思いました、でたらめな言葉(音)を「喋る」から「描く」に変換したらどうなんだろう?

やってみた 解放されたような感覚でどんどん書き連ねることができた。

何時間も続けていくとやがて無心になれる。

でたらめな無秩序なことが、やがて腑に落ちるところに辿り着く。
混沌としたものがまとまり、やがて良いところへ。

大袈裟かもしれないけれどひとつの真理をついてると思った。
(僕はデザインをしているので)無意識に自分が落ち着くカタチが現れる。

無の時間。

まさに書きながら瞑想する。

そこまで到達したいものです」。

無想書記のワークショップをすると参加者の方たちの個性が良く出て、とても面白いという。

左:無想書記 右:デザイン担当をした、福原流笛方 福原寬氏の「宝船の祈り」CD ジャケット、〜七福神〜天の扉を開く音〜フライヤー

この日訪れた黒須さんのアートスペースには様々なコンセプトを持つアート作品が飾られていた。

「あなたの”木”を描きます」
「僕は木が好きなんです。木って僕たちより、長く生きていて。

目に見えるもの、見えないもの、色んな命が宿っていて、すべてを包括している気がする。

僕と同じように木が好きな人に特別な思いやエピソード、木にまつわる思い出やお話を聞き、僕が自由にイメージして、あなたの“木“を描くんです。

それぞれにとても素敵なストーリーがあり、オーダーをいただく度に僕の方が心癒され感動しています。

出会いとともにいろんな「あなたの木」を描いてゆきたいです」。

「黒須さんの木は何ですか」 と尋ねたら、 「多分、初めて言われたかも。 特定はないけれど」 と絵本になる予定の「モクゾウ」という作品をみせてくれた。

「音からアート、アートから音楽へ」
「アート活動とは別に、夫婦で『Beyond Nine』として音楽の活動をしています。余白をつくるということ。
呼吸って、まず吐き出さないと吸い込めない。

歌は歌うことによって思いがダイレクトに伝わる。

アートは思いが実感しにくい部分があるけれど巡り巡って自分に還ってくる。

アウトプットした余白に何かが舞い降りる。
音楽もアートも、両方をやっているときが本来の自分とマッチしているんです。

どちらが欠けても自分ではなくなってしまう」という。

「思う前にやってみてジタバタしよう」
「我慢しない。なんとかなったりする。そこから広がっていくこともある。

どんなに大変でも辞めずに続けていくこと、続けているからこそ想像もしていないようなことが起こる。

歳を重ねるごとに引き出しも増えるけれど、その時その瞬間“今“感じることをしていきたいですね」。

自然体で会話する黒須夫妻。言葉の音が心地よく響いた。

■略歴
1962年生まれ 東京都小平市在住
1991年フリーのグラフィックデザイナーとして 「Realize」 をたちあげる。
2009年ギター&ボーカルデュオ Beyond Nine結成。ライブ、CD、You tube、音楽配信サイトでオリジナル曲を配信。
2015年自らの創作活動を開始。全く自由な発想で創り表現する。
主な作品
【無想書記】【anywhere MUSiC!】【Birthdeath】【Voices among the water 水からの声】

■お問い合わせ
HP : https://realize3.jimdofree.com/ 
Instagram : muso_cross shun_cross beyond_nine9
Face Book : https://www.facebook.com/cro3eye
You Tube : https://www.youtube.com/user/SNBeyond9/videos
https://www.youtube.com/channel/UCnhE5_8MR_7cD-QIXe_-RPw/featured
オンラインショップ : https://3cross.thebase.in/

(取材ライター: 高橋真理)